風一つ無い静かな空。
未だ春の来ない幻想郷は、冬独特の息を潜めたような静けさに満ちていた。
そんな静けさを打ち破るような、一人の姦しい少女が
―きっとこの氷精は一年中姦しいのであろう―
凍った湖のほとりで一人の少女と寄り添い合い座っていた。

「三つ巴に持ち込むなんて、流石だね黒幕者!次の策は何?」
「ふふ…、あなたなら、どうする?
 抗うことの出来ない絶対なる滅びの理。
 それを司るものとその従者を前にして、あなたなら?」
黒幕者、と呼ばれた少女は、質問を質問で返す。
どうやら彼女は冬の妖怪であるらしい。
その雪のように白くふっくらした肌が、
冬の弱い日差しを受けて柔らかく輝いていた。

次の戦いの相手はおよそこの季節外れの妖怪の敵う相手ではなかった。
まともに戦っては勝ち目がある筈も無い敵。
それどころか、生きて帰れる目も。

「…よくわかんない。けど…。
 どんな相手だっておもいっきりぶん殴る!それだけだよ!」
妖怪は笑った。
いつもならその笑いには嘲りが混じっていたことだろう。
実際それを言った氷精にしたって馬鹿にされると思っていたのだから。
だけど、その笑い声は心底嬉しそうで、冷たい澄んだ空気に優しく響くのだった。

「…そうね。それがいいわね。」
「え?」
驚きで目をまんまるくした氷精の口から、思わず驚きの声が零れた。
「策はもう、無いわ。」
「黒幕者…?」
氷精は立ち上がると、妖怪にこれまでになく真剣な目を向ける。
その声には先程までの巫山戯た雰囲気は全く無い。
「………一人ではいかせないよ。」
「あら、あなたにしては勘がいいわね。」
それまで通りに微笑みながら、妖怪は答える。

「黒幕には表で動いてくれるのがいないと始まらない。
それに…私達はいつも一緒。
どんな時も…。そうでしょ?」
おどけるような口調で、しかし固い意志を持って氷精は言う。
それに妖怪は優しくたしなめるように答える。
「駄目よ。これは私の戦い。それにあなたは一度負けてるんだし」
「あっちだって主従で来るんだから、構うことはないわ」
しょうがない娘ね、と妖怪はため息を付くと、
微笑みながら立ち上がった。

「…じゃあ、作戦でも立てましょうか。」
「うん!」
なんとも嬉しそうに答える氷精。
この娘は死が怖くないのだろうか。あるいは怖れを知ることすら無いのだろうか。
それとも…そんな迷いはずっと昔に捨て去ってしまったとでも?
無邪気にはしゃぐ妖精を見て、そんなわけないか、と妖怪は心の中で笑った。

「いい?」
妖怪は手を伸ばす。その手の平の上に意識と力を集中させると、
冷気と雪が舞い上がりそこに収束する。現れたのは一枚の符。
「私の符があるわね。」
氷精は何を今更と疑問に思いながら符を覗き込む。
「…これを発動させるわ。」
え、と驚く氷精の目の前で、符が眩い光を放ち弾ける。
大きな術を使える回数は限られている。
大事な戦いを前にして、こんな所で使っていい筈は無いのだ。
何故?と疑問の目を妖怪に向ける氷精。そして気づく。

符によって解放された力が周囲の空間を支配し、冷気と寒気が空を満たす。
雪煙が渦を巻くように巻き上がると、暗い空にきらきらと光る白い軌跡が描かれる。
その軌跡に残った雪の粒はやがて空中の冷気を集めると、
大きな雪の結晶となって青い光を撒き散らしながら降り注いだ。
それらが狙っているのは、自分。

「レ…!」
驚きの叫びは封じられた。振り向いた氷精を、妖怪が抱き締めていた。
耳元で一言、囁く。
全ての感謝を込めて、明るく、でもどうしようもなく淋しい声で。

氷精は身動き一つ出来なくなり、立ち尽くす。
今にも泣き出しそうな顔をして。
だがその顔は直後、降り注ぐ雪の結晶に、そして妖怪から生み出された激しい雪の波に呑まれ、
全てを包み込む白の中へと消えていった。

湖のほとり、足跡も何も無い一面の雪景色の上に一人佇み、
妖怪はじっと雪を見つめていた。

「この冬はいい冬だった…。
 いつもより長く過ごせたし、
 そして何より、あなたと出会えた。
 …でも少し長すぎたわね。」
妖怪はひとり微笑むと、
諸々の命の冬の眠りを妨げぬよう気遣うかのように、
静かに…草葉の蔭の妖精達すらも気づかない程静かに、
遙かな空へと飛び立っていった。
そのあとには、ただ静かに雪が舞い散るのみだった。


…暫くして氷精はようやく雪中から抜け出すことが出来た。
あたり一面はいつもと変わらぬ銀世界。
いつもの何も変化のない冬の景色。ただ、彼女がいないことを除けば。
赤く腫らした目を空に向ける。
妖怪の名残の雪が、そっと宙に舞っていた。
…愛しきものの名を呼ぶ氷精の叫び声が、澄み渡った冬の空気に木霊する。
やがてそれは次第に泣き声へと変わっていくと、
遙かな空の虚空へと吸い込まれていった。





其処には既に二人がいた。
死人嬢とその従者。
姫は妖怪に気づくと会釈する。
それに礼を返しながら妖怪は問う。
「待たせたかしら?」
「…まだ、らしいわ」
嬢は微笑み返す。
亡霊の姫の姿は和風の死装束にフリルと花をあしらった異様な出で立ち。うずまき。
噂に違わぬ惚けた顔をしているが、実際に会ってみればその威圧感たるや、どうだ。
なるほど、仮にも数多の死霊達を率いれるだけの事はある、そう妖怪は思った。
そしてその従者も、少しでも主に対して危害を加えるそぶりを見せたら
斬りつけんとしてか、刀に手を掛けながらじっとこちらを睨み付けている。

「…こんなとっておきの舞台の端に上がらせて頂けることを光栄に思うわ。」
「私はあなたがこの舞台を全部あつらえたと聞いたけど?
 この三つ巴も、そして私との戦いも。」
少し呆れるような笑いを浮かべて嬢は答えた。
「かわいそうに、寒さにやられたのね」
妖怪はなんのことやら、とばかりに肩をすくめた。

ふふ、と笑った後、嬢は続ける。
「私達にはあなたに消えて貰う理由があるわ。
 あなたは冬の妖怪。あなたが消えればより一層の春が戻るかもしれない。
 それにしたってわざわざ立ち塞がらなければ、あなたに構う気はなかった。
 でも、あなたが私に刃向かう理由は無い。
 あなたには解っている筈。
 私が春を集めてるが故にあなたは今此処にいられるのだし、
 もし私から春を取り戻せばあなたは消えねばならない。
 なのに何故あなたは私と戦おうというのかしら?」

妖怪は目を瞑って笑みを浮かべながらそれに答える。
「醜くて憐れね。散ることのない桜、終わることのない春は。
 だと思わない?朽ちることのない死人嬢。」

「…黒幕と呼ばれるだけはあるわね。どこまで知っているか知らないけれど。
 本当に面白い人。でも残念ね…。あなたはもう舞台から消えないと。」
そう冷たく言い放たれた言葉の直後、時間を凍らせる程の殺気が周囲を包む。
死人嬢が発しているのでは無い。
その後ろに控える従者が、今にもその背に負った太刀を閃かせんと裂帛の気を溜めていた。
だが、妖怪はそれにも動じず、じっと嬢の方を見つめる。

「止めなさい、妖夢。」
柔らかく静かだが、強い威圧感を持つ声が響き渡り、
それに怯えるかのように張りつめた時が解かれる。
従者は無言で主の方を見返す。

「…今はまだ。
 …それに此処では私も敵だということを覚えていて?
 やるなら、私達を等しく切り捨てるつもりで、来なさい。」
従者の顔に明らかな当惑の色が浮かぶ。
主を敵として全力で挑めというのならともかく、
主人とどこぞの木っ端妖怪を同等に敵として扱えなどというみょんな事は
不器用なこの従者にとっては酷すぎる命令だった。

その表情を見て妖怪は微笑む。
「いいわよ?…二人で来ても。」
「あらあら…。そんなに死にたいのかしら?私はまだ何もしていないのに。
 …それともあなた、最初から死ぬ気で此処に?
 遅かれ早かれ消えゆく定め。せめて華々しく散ろうとでもいうの?」
「黒幕が表に出る。それはもう勝ったってことよ。」
妖怪はその奥に何かを秘めた目で微笑みかえす。
それが真実か偽りか、誰にも解らない瞳で。
「それは強がりかしら?それとも…」

言い止めて、嬢は笑う。
「…すぐに解る事ね。
 …せめて美しい花々に満ちた春の礎となることを幸いに思い、滅ぶがいいわ。」
「春に咲く花だけが花じゃあないわ。」
「ならば咲かせて見せなさい。死の内に芽吹く雪割りの花」

その声と共に、死人嬢の内に眠り、抑えられていた力が解放された。
嬢を中心とした衝撃波にも似た突風が巻き起こり、圧倒的な力が大気を揺るがし駆け抜ける。
やがて幽々子の背後にゆっくりと何かが形を取りはじめた。
それは実際に形を持っているものではない。力によって歪んだ空間が光を複雑に反射させ、
そしてまたその恐るべき力が感覚に像となって映っているのだった。
見るものには、それは古い装飾を施された扇に見えた。
艶めかしくも禍々しい光を放つ、死の扇。
嬢の力は空間すらも支配するのか、気が付けば先ほどまではらはらと降っていた雪も
今はすっかり姿を潜め、代わりに周囲を埋め尽くすは一面の桜吹雪。
そしてそれら全てが、生あるものを死へと誘うもの。
そのあまりの威圧感に背後に侍していた従者すらも畏れ、怯んでいるようだった。
だが従者も二刀を抜き放つと、呼気と共に強く気を張り詰め、構えた。
その力の抜け切らぬ堅さの残る型は彼女が未だ剣士として未熟であることをも示していたが、
漲る気迫が身の内に潜む間違いなく軽からぬ力を顕わにもしていた。
「…参る」
魂をも切り裂く刃が、実直なその瞳が、鋭い光を帯びる。

絶望的な力を持つ二人を前に、妖怪はそっと目を瞑った。
一見冬に見えるこの季節。だが、この妖怪の棲むべき冬は、とうの昔に終わっていた。
只、来るべき春が来ない。だから今は冬でも春でもない季節。冬に見えるのはただの残像。
この妖怪に力を与えるものは、何も無い。
妖怪は、遙か空の虚空を仰ぐ。
何処から来たのか、一片の雪が桜の舞う中を弱々しく落ちてきた。
こんな所に降るなんて…馬鹿な雪ね、そうひとりごちると妖怪は雪をその手にすくう。
冷たい感触は愛おしい誰かを思い起こさせる。妖怪は雪をのせた手を優しく握りしめた。
そしてそれが溶けるまでの僅かな間……彼女はその想いを遙か彼方へと向ける。

やがて彼女のまわりに雪煙が湧き始める。それは地を這いながらゆっくりと広がり、
周囲の気温を急速に下げてゆく。そして死人嬢の力を押し返すかのように、
宙を舞う桜の花びらが、雪の結晶へと姿を変えてゆく。
冬もまた死を司るもの。しかしその死は内に命を隠し、新たな生へと巡りきたる死。
妖怪が握っていた手を開く。雪のように純白の一片の花びらが、桜吹雪に吸い込まれていった。


「冬来たりなば……春遠からじ。
 滅びは我が宿業なれど、
 この生も死も私だけのもの。
 何人にも操らせはしない。
 なれば世の理に背く亡霊の姫よ、
 返して貰うわ、あなたの奪いし春の眠り。」


止まっていた空気を、時を、動かすように、
桜と雪を舞い散らしながら
一陣の風が吹き抜ける。


――東方最萌Stage18 かいまく〜。



































どう、完璧なシミュレートよ恋娘者
   , ー- ‐ヘ              .i\ /i
   /〜〜〜ヽ        , '  ̄ ヽ >    いろいろ美化されすぎだと思うぞ黒幕者 。
 _《.レノノ))))〉        〈リノノレメノミ_   ってか間違い。全部。パーフェクトに間違い。
 \〈《! ゚ ヮ゚ノ》/ ̄ ̄ ̄ ̄/ i、゚ヮ ゚!从´/ )) 
___</!つTつ/  Z80   /__⊂<!⊂)><__
      \/____/

                  r===================
                  ||              ネチョネチョチュパチュパ……
   ___________||r――――――――――
                  ..||\r──―/⌒⌒⌒\ヾ─
          / ̄ ̄ ̄ ̄/ .||\ ::::::::::::::::ノ /     ヾ ええい、生意気を言うのは
     ___ _/ 冷却中 /  ||  \ ::::::::::::::: / /     ヾ この口か!この口かッ!
    |\  \/____/\..||   \ ::::::::::::  〃    
   /\ \             \.     \ ::::::::::::::::::::::ノ 〃 違っ!そっちは…違ぁ…!
 /   \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|      \\:::::::::::::::::::     いうなればアクトレス!ダメ〜!
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   \  /                 \
     \(__________ン



東方最萌えレティ・幽々子・妖夢戦開幕風SS。
少年漫画風のノリで黒幕をカッコ良く、のつもりが、
思いつく端から無計画に書いたらけったいな代物に。
あげくギャフン。イヤッハァ。



























This is just the peferct answer for all of us Amanda(2012/09/17,15:04)

こめんと
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